スポーツと家庭環境


 スポーツマンガなどにおける、家庭環境の話です。
 終了となった「ユート」における親子関係は、大変珍しいタイプだと思います。
 最近のスポーツマンガの主人公は非常に甘やかされています。障害となるものがほとんどなく、スポーツだけに熱中すれば許される――そんな雰囲気があります。
 親のスタンスはだいたい二つで「好意的で大会などの応援にくる」タイプと「実は競技関係者でひどく恨んでいる」タイプ(基本的に男親)。たまに、「スポーツよりも勉強しろ」という母親が登場しますが、深刻な障害とはなり得ないようです。
 ところが「ユート」の父親は、消極的な否定派。「特別反対はしないものの、金がかかるようならやめさせる」というスタンス。アクが弱いため物語を構成しづらいと思いますが、一番現実的に多いタイプではないでしょうか?


ブリザードアクセル」みたいに主役が苦境に立った場合も、有力者が援助してくれることが多いようです。あそこの親は俗物で傲慢で、親を捨てた吹雪には賞賛を送りたいくらいです。本来、たったひとりで道を切り開くというのはとんでもなく難しいことで、小中学生はもとより、高校生だって難しいと思います。吹雪が家を出られたのも、あくまで鼻魔神に拾われる予定調和のうえでのことですし。……あの展開で、独力で吹雪が頑張ると思った人間は皆無だと思います。
 しかし、「ユート」では元チャンピオンとの出会いや有力なコーチに見出されることもなく、子供が子供なりにできる手段で、道を模索しています。(ダイジェストrで見る限り)
ネット上で「暗い終わり方だ」という意見も見かけましたが、私はまったく逆です。夢見がちにそれだけに熱中する話に比べて、現実的な障害を乗り越えようとするユートの方が遙かに逞しく魅力的に感じました。


 地味ながらも堅実な魅力をもった「ユート」は残念ながら終了してしまいました。派手な魅力にかけるものの、面白さではそれほど劣るものではないと私は思っています。
 おそらく、のんびりでも連載していけると考えたほった先生の驕りと、少年ジャンプ編集部を過信したことが打ち切りの原因なのでしょう。
 特にジャンプ編集部はなぁ……。いくらでも取り替えのきくマンガを続けるくらいなら、「ユート」を大事にしてもらいたかった。


 一方、ユートの父親にも一理あって、「トップに立っても、食べていけない競技」である以上、親として賛成できないのは当然だと言えます。
「オリンピックから外されたと騒ぎ立てる競技」のなんと恵まれていることか! のんびりとストなんかやれる連中には、マイナー競技者の悲哀などわかりもしないのでしょう。(ナイターによる不利益ばかりを被る、野球嫌いの主張でした。ちなみに、野球関連で言えば選手よりも経営者の方が嫌いです)